11. 鷹と蠍とギュウギュウ



ところ変わって、台所に俺たちはやってきた。そこには、俺より一回り体格の良い、オレンジ髪の男が、白のフリルエプロンを身に付け台所に向かっていた。カツカツ鳴るのは、ボウルを抱え泡立て器でかき混ぜる際に金属同士が接触する音だろか。

「『すいぎゅー』。」
「ん?どうしたんや『蠍』。お菓子の時間にはまだまだ早いで?」

台所に向う男『水牛』先輩に飛び付こうとした『蠍』を裾を掴み、引き止める。

「『蠍』、『水牛』先輩には飛びつくなよ。」
「せや。今料理中やからな。」
「違います。変態が移るから触るなと言ってるだけです。何ですかそのフリルエプロン。気持ち悪いですよ?」
「ひっどいわぁ〜。そない口の悪い子に育てた覚えはないで!」
「育てられてません。」
「おい、『水牛』!」

俺と『水牛』先輩が軽い茶番に『星』が割って入った。

「なんや、『星』坊ちゃん?」
「お、俺に…菓子の作り方を教えやがれ!」
「何でや、いきなり?」
「その、それはだな…事情があの…あってだな。」
「『水牛』さん、『星』のやつ『閃光』に告白するきっかけに、手作りお菓子を作ろうと思ってるんスよ。」
「『さそり』が作戦かんがえたんだよ!」
「『水牛』さん、あの、面倒だとは思いますが協力してくれませんか?」
「『空』『蠍』『雷』…おまえら…じジーンとなんてしてないのだからな!!」

『星』達の言葉に『水牛』の抱えていたボウルから音が止まり、砕かれたチョコレートの乗っているまな板の横にボウルを置いた。

「な、なんて…なんて、ええ子たちやぁぁ!おっちゃん感動やぁぁあ!」

台所から俺達の方へ振り返り、目に涙を微かに浮かべ、腕を広げ走って突っ込んできた。勿論『蠍』は俺と一緒に当たり判定範囲外に非難済みだ。
結果、航空部隊3エースが捕縛された。『水牛』の逞しい腕と胸筋によってだ。正直、アレに捕まると絞められて苦しいより暑苦しいの方が精神的にダメージがくる。

「お、俺ワープでいちぬけピ!『星』せいぜい好きなだけ巨乳雄っぱいを堪能してな!」
「だが断る!ピ●チュウ!10万ボルトだッ!」
「誰がピカチ●ウだよ!『星』の厨二で残念な頭に電気ショックするぞ!」
「若者達の青春、ドラマチックな恋模様、素敵やわぁぁ!」

――5分後―

「「「ゼェハァ(ぐったり)」」」
「ほな、『閃光』のハート捕縛作戦《パティシエのオススメ》決行や!」