01. 鷹と牝馬

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俺のコードネームは『鷹』。とある軍団に属する者だ。

本日をもって、地方の制圧作業をする工作兵から格上げされ、晴れて我らが閣下の御側で仕事をさせていただけるようになった。ただ、閣下直属の部下は2人一組と聞いているのだが、俺自身、誰が俺のパートナーなのかは聞いていない。同僚、いやもうコイツも部下か。横にいる『牝馬』からの話では情報課の総括している『初音』という奴から引き継ぐそうだが、正直な事を言ってしまうと面倒だ。

俺の今までの功績は他の奴らよりも頭一つ多いだろう。

これも、自慢ではないが、単独での潜伏任務の成功率の高さと、機転の利く頭の回転の速さと、俺の持つ神経浸透の特殊能力の応用性の広さが、この結果を導き出したと言っても過言ではないだろうな。

「いや、お前それは過言じゃないか?」
「煩い、カマ馬野郎。」
「馬鹿はお前だ、チキン野郎。俺だって好きでコードネーム『牝馬』になったじゃねぇもん。」
“もん”とか使うんじゃない、俺は『鷹』だ、誰がチキンだヘタレ顔。気持悪い。絞り上げて公衆の面前に晒すぞ。
「おお・・・怖い怖い・・・でもさ、お前も同じ顔だから、キモいヘタレ顔だな。」

別に俺は『牝馬』と兄弟とか親戚ではない。本当に赤の他人だ。
ただ、他人の空似にしては俺たちは気持ち悪いくらい似すぎていた。
世の中には自分に似ている人間が3人だか5人いるとかいうが、あまりにも世界が小さすぎやしないかと、世界に八つ当たりたい。
と言うか世界を絞り上げて俺似のやつを殲滅する。

そういえば、入団試験で『牝馬』にバッタリ会ったときは「俺、死んだな」と思った。

「なぁ、入団試験で初めて会ったとき、お前、何か聞き取れない悲鳴上げて尻餅付いたけど…、なんて言ってたんだ?」

などと時々カマ馬に聞かれるが・・・言えるか、ドッペルゲンガーだと思ったなんて・・・