02. 鷹と閣下の昔話

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数分前に『牝馬』と別れ、俺は閣下のいる司令室の前に来た。
ついに、ここまで来た。
閣下直属に仕えることができる地位に。
幼い頃から憧れていた閣下のお側に・・・

俺は幼い頃、住んでいた地区が戦場になった。親兄弟が銃火器戦で死に、そこまで安全でもない家に逃げ帰り、隅で震えていた。居住区が戦場になり、一週間。ついに家のドアが蹴破られ、俺の命も終わりかと思った。
しかしそれは、微かな生体反応をキャッチし、敵の潜伏かどうかの確認しに来た、白銀の御髪の御仁、若かりし閣下だった。

「ガキか…左腕を見せろ。」

俺は、震えながらも左腕の袖をまくり上げた。

「エンブレムはないな…この地区に住んでいた子供か?」
「・・・は、はい・・・」
「家族は、死んだか?」
「・・・はい・・・」
「泣くな、辛かっただろう。この地区の戦争は我らが治めた。我らの仮設基地に来い。何か温かいものをやろう。」

若かりし閣下は優しく、ぐしゃぐしゃに泣く俺の肩を抱きしめてくださった。

「あの時の温もり、俺は忘れておりません。閣下、今一度、お側に・・・」

「アンタ、こんなとこで妄想に耽ってんじゃないわよ!邪魔なのよ!」

俺は、ふと、低い声の女口調でしゃべりかけられた方を向くと、頬に強い痛みを受け、視界が回り、地に伏せた。
声の主に蹴られたのだと理解した。ただ、痛みよりも、頭がクラクラすることよりも、この俺が地に伏せられた事よりも、衝撃だったのは・・・
声の主に蹴られた時に、見えてはいけないものが見えてしまったことだ。