13. 鷹と蠍と任務



幹部になり、『蠍』と会い、一週間たった。こっちでの書類仕事はあらかた覚え、他の幹部の異様なテンションにも多少慣れた。しかし如何せん、前は現地での仕事ばかりだったせいでもあり、何か物足りなさもある。ハッキリと言うと『蠍』を戦場デビューさせたい。

「ということで、『初音』どこか『蠍』が思い切り暴れられるような現場任務ないか?」
「・・・だめだ、閣下から『蠍』の戦地への出撃承諾を得られていない。」
「なぜだ、閣下からの詳しい理由などは?」
「・・・ない。」

・・・というわけで・・・

「閣下、『蠍』の出撃許可をください。」
「ボス、おねがいします。」
「・・・だめだ。」
「なぜですか閣下、『蠍』はもう十分な戦闘スキルと知識があります。あとは経験だけなのです!」
「しかし、『蠍』はまだ戦場に出してやりたくはない。」
「ボス、なんで?『さそり』たたかいたい。」
「閣下、『蠍』をこんな装備にしておきながら、いまさら何をおっしゃってますの?・・・」
「・・・閣下、お気持ちお察しする。自分の家族が戦場に行く姿を見るのはつらいです。」
「そうなのだ、我が戦場に赴くのは別段何とも思いはしない、ただ辛くなってしまった。こんな思いにふけるなど。年をとったせいか・・・」
「などと言って同情させ引かせようなど無駄です閣下。その手はもう、この一週間で見飽きましだからね。入りたてなら深刻にことを取り違えたでしょうが、もう通用しませんからね。」
「くぅ・・・どんどん『鷹』が『閃光』みたいな手堅い感じになってきたな・・・。どうしたらいいと思う『初音』?」
「『初音』なら『隼』と外に遊びにいかせましたわ閣下。」
「『閃光』!」
「はい、私からもお願いします閣下。そろそろ『蠍』に実践をさせ経験を積まないと、『蠍』になぜこの義手と義足をつけたのか・・・」
「・・・『蠍』・・・本当に戦場にいきたいのか?怖いところだぞ?」
「うん。ボス、『さそり』は向こうの軍にいるたいしょうと戦いたいの。この軍にはいれば、たいしょうと戦えるってボスやくそくしてくれた。ゆびきりげんまんしてくれた。」

『蠍』は閣下に近寄りギュウと抱きしめた。

「ボス、『さそり』は『さそり』のパパとママみたくいなくならないから、泣かないで。」
「『蠍』必ず帰ってくるのだぞ?」

閣下は『蠍』を抱きしめ返し肩をかすかに揺らす。

「ご心配なく閣下、必ず『蠍』と俺は家族のもとに帰ってきます。」
「命令だ。」

俯きから上がった閣下の顔は厳しく、俺が初めて閣下と会った時のあの凛々しさがあった。

「生存者を多く見つけ出し、敵を殲滅し、お土産を買い、必ず帰還すること!」

途中、緊張感を台無しにするような単語が聞こえたが、まぁそれは、幻聴だったんだと結論付けた。




〜子連れ鷹白書  終 〜