12. 鷹と蠍と看破と冷蔵庫



「オッサ…いやオッチャン、ちょうどいいや、ジャム高いとこにあるんだとってよ。」
「…次はちゃんと『鷹』と呼ばないと、絞り上げるぞ。」
「ウチの相方苛めんといて『たっちゃん』。」
「よし、新作を『水牛』先輩で試しましょうか、88番より面白いのもありますよ?」
「ワイも苛めんといて…」
「『鷹』さん、そこのマーマレードとイチゴとブルーベリーとって。」

流石に大所帯の共同キッチンだけあって大層な物があり、所狭しといろいろな物が詰まっている。個人の物は名前を表記するようだ。例を挙げるなら、《航空部隊専用機》とシールが張られたプリンが入っているなどあるな。

「これでいいか?」
「サンキュー。」
「『たか』、豆乳ってなに?」

『蠍』が豆乳と書かれた紙パックを差し出してきた。何か、メモが貼られている。何と書いてあるか確認するため、『蠍』と同じ高さまで屈む。

「確か、大豆から抽出された何かじゃなかった…」

メモには「レディー以外飲んじゃダメよ♪by『joker』」と書かれていた。

「『蠍』飲んではいけない、絶対悪いものだ。」
「えー、ちょっとでもダメ?」
「ダメだ。危険かもしれないだろう!」
「何で危険物が冷蔵庫に入ってんだよ。」
「別に男が飲んでもなんともないぜ。」

いつの間にか背後に『狂乱』がいて、なぞの豆乳が無害だと発言した。

「『狂兄』なんで?」

狂兄ぃ?というこは・・・

「『狂乱』『看破』お前らも兄弟なのか?」
「「うん。双子だし。」」
「『初音』のやつはなんなんだ・・・」
「四兄弟の父やで。ちなみに『蠍』ちゃんはノーカウントでや。」

なぜだろうとてつもなく悔しい・・・あんなまるっきり不審者になんか負けてると思うととてつもなく悔しい。

「『きょうらん』。これ飲んでもへいき?」
「ああ、『joker』曰く、野郎は意味もなく、たくさん飲むからだめなんだとさ。」
「じゃあ、『さそり』飲んでみる。」

疑心暗鬼になりながらも、透明なガラス製のコップを『蠍』に渡す。
紙バックの中身は至ってふつうの牛乳のようだ。

「ただし、寝る前にのんだらぁ、口の中に豆腐っぽい風味が広がってぇ、それが朝まで続くとか続かないとか・・・」
「えー?やだー!『きょうらん』のおバカ!もう飲んじゃった!」

『蠍』、豆腐の風味云々は寝る前でであって、今から朝までずっと風味が続くというわけではないからな。

「『鷹』、なんか口直しできるもんだしてやりぃ。『蠍』ちゃんもうちょいまったって。マシュマロさんすぐできっかんな。」
「『たか』リンゴジュースとって。」
「『たっちゃん』冷蔵庫開けんならちょうどええわ、これ入れたって。」

「『蠍』、『水牛』絞り100パーセントはいらないか?」
「まずそうだからいらない。」