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ここにこの文章についてのメモとか参考とか注釈とか
「…以上が、一年B組の入学に際しての目標です。これを達成するために私たちは一丸となって努力していきます。一年B組代表、佐藤カナ。」
B組の代表はハキハキと元気に目標を述べた。いかにも人気者という感じの可愛くて、頭も良さそうな女の子だった。
彼女が壇上から降りてくる。次はアヤノたち、C組の番だ。
「ハル…次だよ。」
アヤノは声をひそめて、隣に座るハルに話しかけた。ハルはまたしてもコックリと船をこいでいたが、アヤノが肘で突っつくと目を覚ました。
「ん?…あぁ、次か。」
まだ眠そうな声でハルはつぶやく。そして軽くのびをして姿勢を正した。
「続きまして、C組の目標発表です。代表の生徒は壇上に上がってください。」
司会進行のサクラ先生がにこやかに言った。はい、と答えて立ち上がったのは…ハルである。
アミダくじの結果、本人が寝ている間にハルが代表に選ばれてしまったのだ。アヤノは自分が勝手に書いてしまったから、ハルに申し訳なくて代わりに代表をしようかと申し出たが、ハルは選ばれたならやると言って譲らなかった。
「…ハル、頑張って。」
アヤノが囁くとハルはニヤリと笑って、壇上へと上がっていった。
ハルが壇上に立ち、聴衆に向かって第一声を発しようとしたその瞬間…。
バチンッ!
突然、会場全体の照明が落ちて辺りは暗闇になる。窓も締め切っているせいですぐ近くの様子もわからない。
「何?!何が起きたの?」
アヤノは急に暗くなったので軽くパニック状態に陥っていた。周囲の生徒たちもざわざわと落ち着きをなくしている。
「…アヤノちゃん。」
「きゃっ!」
「しー!静かに。僕ですよ。」
「え?ヨシノさん?」
いつの間にかアヤノの隣にヨシノが座っていた。こっそり忍び寄ってきたらしい。
「これからちょっとした事件が起きますが、その解決を君にしてほしいのです。」
「え?それはどういう…?」
「なに、簡単なことです。きっとサクラ先生がトンチンカンな推理をしてみんなの注目を集めます。その間に君にはある場所に行ってほしいのです。」
それからヨシノはアヤノにその場所を耳打ちした。アヤノはわけがわからなかったが、その場所のことはわかったのでヨシノにわかりましたか?と聞かれると頷いた。
「では、よろしくお願いしますね。」
そう言ってヨシノはまたこっそりと去って行った。ヨシノの気配が遠くなったころ、何の前触れもなく明かりが点いた。
「…え?」
生徒たちのざわめきが一層大きくなった。それもそのはず、明かりが点いた壇上にはそこにいるはずのハルの姿がなかったのだから。
そして壇の後ろの壁には「伊東ハルくんの身柄は預かりました。Y」というメッセージが残されていた。