06. 迷探偵?!サクラ先生!!

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「…ここは私の出番のようですね。」

突然、一人の生徒が消えるという事件に入学式の会場はざわめきたっている。そんな中、一人静かにつぶやいた人物がいる。
キラリと眼鏡を光らせ、不敵に微笑むその人物は誰あろうサクラ先生だった。

「皆さん、静粛に。ご安心ください。遠山家の名にかけて、この遠山サクラが必ずや犯人を捕まえてみせます!」

司会用のマイクを握りしめ、サクラ先生は高らかに宣言する。さっきまでにこやかに司会進行していた優しそうな先生の突然の宣言に、今日入学したばかりの新入生たちは全員が唖然とするばかりだ。

「…また始まった。遠山先生の迷推理。」

一方、式に関わっていた教師たちは慣れているのか、呆れ気味のため息とともにそんなセリフを吐いている。
しかし、サクラ先生を止めようとするものは誰もいない。教師たちは諦めたように成り行きを見守っている。

「では、まず状況を整理しましょう。」

そう言いながら、何故か壇上へ上がるサクラ先生。つられて生徒たちも視線を壇上に向ける。

「まず、突然照明が消えて、数分の後に明かりがつくとC組代表の伊東ハルくんが居なくなっていた。そして、犯行声明とおぼしき文章が残されている。」

そこでサクラ先生は一旦言葉を切り、後ろを振り返って壁に書かれた文章を見上げる。やっぱりつられて生徒たちも壁の文章を見る。

「つまり!」ダンッ!

勢いよくサクラ先生が足を踏み鳴らしたので、生徒たちはビクッと体をこわばらせる。そんな生徒たちに構うことなく、サクラ先生はノリノリで推理を述べていく。

「伊東くんは照明が消えていた数分の間に何者かにさらわれ、その犯人は真っ暗な中、この文章を書いたということです!」

そーですね。とお昼の国民的人気番組のように返したいところだが、発言する者は一人もいなかった。

「しかし、真っ暗なこの会場から外に出た場合はどこかから光が入ってしまいます。ということは、犯人はまだ外に出てはいない。つまり、犯人はこの中にいます!」

…なんというこじつけな推理だろうか。その場にいるほぼ全員がそう思ったが、サクラ先生は自分の推理に絶対の自信を持っているようだ。

「さあ、犯人!自首するなら今のうちですよ?!私は遠山家の名にかけて、必ずあなたを捕まえてやりますからね!」

キラーンと光を眼鏡に反射させ、サクラ先生は断言する。そして、自らの勝利を確信したかのように高らかに笑った。

「オーッホッホッ!」

まるでどこかの悪役みたいな笑い声に一同はどん引きするより他になかった。