06. 鷹と蠍とムンムン



「ほあたぁぁぁ!」

出入り口が土煙を上げ、何かの雄叫びと共にドアが飛んできた。ドアには靴の、ピンポイントで言うならばハイヒールの靴跡がクッキリとついている。どうやら敵はドアを蹴破り潜入。一体全体、目的はなんだ?



「ラブロマンスの香りよ!」

「『joker』…何をしてる。」
「ラブロマンスの香りがムンムンしたから、俺様飛んできたのよ!誰なの?恋をしてるのはどこの野郎なの?名乗り出なさいッ!」

土煙が消えると、そこには何故か
愛のキューピット姿の『joker』が…

「コッチを向いて足を開くな!『蠍』の教育上不適切かつ不健全だ!早くモノを隠せ!」

「『たか』、何にも見えないよ?」
「少し不快なモノが遠く彼方に行くまで我慢しろ。」
「『じょーかー』いるんだよね?」
「いるわよぅ『蠍』ちゃん。今日のコスチュームは愛のキューピットちゃん仕様よ。」
「『たか』!『さそり』もみる!アノこすちゅーむの『じょーかー』、天使さんみたいで可愛いんだよ?」
「もう『蠍』にはお披露目済みよ。今更隠さなくても平気よ。ね〜『蠍』ちゃん。」
「ね〜『じょーかー』。」

…悔しくなんかないぞ…
「ね〜。」お揃いなんて、全ッ然、羨ましくないぞ!

「…教育上不適切物無条件殲滅アタック!」
「あぁん!痛いじゃないのよ!人間誰しも不健全なのよ?
そ・れ・よ・り!誰なの?今日のラブロマンスの香りは『空』の軽いのとは違って、まるで青春の1ページ。中高生の初恋のような…甘酸っぱいラブロマンス!」
「軽いって『joker』さん酷いなぁ。なあ『雷』?」
「多分ラブロマンスの香りはソコに転がってるトマトからだと思いますよ?」
「無視か…」

『雷』が隣にいるトマトこと『星』を指を刺すと『joker』がカツカツとヒールを鳴らし歩み寄り、やや前屈みになり『星』をジッと見つめる。後ろからケツやらナニやらがチラチラ見えるのが、今の間は目を瞑ってやろう。

「『雷』の言うとおりね、恋してる目だわ。相手は割れてるのかしら?『星』の性格からして、この手のストレスが溜まると集中力が落ちて戦闘に出られなくなるかもしれないわね。」
「なっ!?戦闘に出られなくなるだと!俺様と、俺様の翼(戦闘機)の舞台に立てないだって!それは困るぞ!どうしたら良い?」
「スパッと告白して決着つけて解決しちゃいなさい。付き合っちゃうなら付き合う、断られたならアッサリ諦めることね。」
「そうすれば、俺様はエリートな航空課のリーダーで、いれるのだろうな?」
「た・だ・し!勿論な事だけど全力投球で行きなさい!それくらい勢いがないと、恋の壁は硬いのよッ!恥を捨てなさいッ!」

こうして、『星』の恋愛成就作戦が始動した。しかし始動後間もなく、それは作戦通りには行かず。
俺にとっては他人事なのだが、頭を抱えたくなる午後の始まりなのであった。