04. 鷹と不審者

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「にしても、『鷹』ちゃんのパートナーは?ここのドアは2人じゃないと開けらんないのよ。」
「まだ会っていない。しかも、何の情報も貰っていない。情報課は何をしてるんだか・・・」
「アー・・・。たぶん泣いてんな。」
「まあね、『初音』ちゃんも、『蠍』ちゃんを手放すのツラいでしょうね。」

『joker』と『狂乱』は二人とも手袋をしたまま、認証機器に触れるとランプが緑に点滅しドアがスライドして開く。

手放すのが泣くほど辛い優秀な奴がパートナーということなのだろうか。ならば優秀な俺のパートナーにふさわしいかもな。俺の足手纏いにならない、得になるパートナーなら歓迎してやらんこともないな。
しかし、情報課を総括する奴が泣くほどとは情報処理能力に長けたやつか?それとも、情報を最大限に有効活用してくれるようなやつか?

「失礼します、閣下。」
「失礼しまぁす、閣下。」
「失礼しまッス。『joker』デレってすんな。『鷹』がチョイと引いてるし。」

部屋の奥には、偉大なる閣下ではなく、マスクにサングラス、深くキャップを被り、首にはヘッドホンをかけ、紺色のポンチョ型レインコート着込んだ黒髪の明らかに不審な男が、閣下の机を漁っていた。

「貴様、それ以上動くな!」

俺はとっさに、支給された拳銃を向けた。

「何者だ?我が軍の軍服ではない、という事は、潜入したのか?どこをどう入ってきた?何が目的か吐いてもらうぞ。」

「ね、ねぇ『狂乱』。」
「・・・なんだよ『joker』。」

「こ、これ・・・盛大にいっちゃって良いかしらん?」
「おk。YOU笑っちまえよww」


俺の後ろにいた二人がいきなり笑い出しやがった、貴様等ぁ・・・

「貴様等煩いぞ!今、不審者に潜入され非常事態だろう!」

「ふww不審者ってww『鷹』ちゃんナイスww」
「『初音』おまっwwwwバカヤロウwww不審者言われてやんのwwwww」


「・・・『初音』?アノ、明らかに不審者の奴が情報課の『初音』なのか?」

俺は、拳銃をおろしてしまった。
失礼だと思うが、いろんな意味で危ないと俺の危険信号が鳴っている。俺はまだ奴を、不審者を『初音』だと認知していない。むしろしたくない。アイツは軍隊向きではない、もっとこう、モヤっとした世界にいそうだ。そして、キレると予測もつかない攻撃をしてくるタイプだ。考察しているうちに、『初音』はスルスルと流れるように足音無く歩いてきた。奴め、どうでる…

「『鷹』悪ぃこと言わないから、早く謝っとけ。『初音』はキレると容赦ないぞ。」

猫背のせいか、俺より頭2つほど小さい『初音』がまだ歩み寄る。再び俺は拳銃を構えようとした、しかし…

「・・・いけない、子だな・・・」

マスク越しに、低く小さな声が聞こえたと同時に、手に鋭い痛みが走った。拳銃は叩き落とされ、左手の甲が赤くひりひりし、叩かれた衝撃で両の手が微かに痺れた。何が飛んできた?まだ互いに手も足も届く距離ではない。叩かれた左手をチラと見ると、ミミズ腫れができた。

「『狂乱』今のはどっち?」
「たぶん、配線コード。あ、シッポ出た。」

配線コード?シッポ?
なんだソレは?予測できないタイプどころじゃあないぞ!何故人体にシッポがついている!『狂乱』曰わくシッポが俺の拳銃を器用に丸めこみ、レインコートの中に消えてった。

「『狂乱』な、何なんだあれは・・・」
「あ?『初音』だけど?」
「生物学的に何だときているのだ!」
「多分、人じゃないんじゃない?」
「なぜだ、答えろ『joker』。」
「実は、『初音』のレインコートの中って誰も知らないのよ。息子の『狂乱』でも知らないんだもの。」
「ああ、中に入れてはもらえるんだけどさぁ、毎回毎回目隠しされちまうんだ。」

まさかの子持ち!?

「・・・そうだが、悪いか?」

よそ見をしている間に間合いを詰められてしまった!
俺の体に『初音』のシッポがぬめりと絡み付き、眼をふさがれた。

「は、離せ!」
「・・・反省の色がないようだな。大きいのに悪い子だ、仕置きをしなくてはな。」

 その後、俺は『初音』のレインコートの中に引きずりこまれ意識を手放した。




〜数分後〜


「・・・仕置き終了。」
「ちょ!待ちなさいよ『初音』!我が子の前にそんなもんさらすんじゃないわよ!」
「『joker』ぁ、お前まで目隠しスンなし、どうなってっか見えねぇじゃん。見せろしぃ。」
「あんたにはまだ早いわよ!」

悪魔の親はもっと悪魔でした。

「・・・あくまで・・・いや、やめておこう」