07. 鷹と蠍と親バカ



「・・・むぅ、おはよ、ボス。」

『蠍』はむくりと半身をあげ目覚めた。人の手とはまったく異なる金属製の鉤爪で器用に目を擦る。

「すまない『蠍』、起こしてしまったかな?」
「ううん。ボス、後ろのお兄さんはだれ。」
「あいつは『鷹』、『蠍』のパートナーだ。」
「ぱーとなぁ?『きょうらん』と『じょーかー』みたいな?」
「そうだ。」

『蠍』はベットから降り、俺にお辞儀をした。

「はじめまして、『さそり』です。」
「ああ、はじめまして。」

『蠍』は俺の半分ぐらいの身長しかなく、俺の方を見上げている。

「・・・しゃがんでやれ、そうすれば互いに目が合わせやすい。」
「『初音』、助言は有り難いが、そう尻尾でぐいぐいと押すのはやめていただけないかな。いろいろと嫌なものが思い浮かぶもので。」
「・・・それはすまなかった。次からは使い目を見極めよう。」

見極められても困るわ!

「閣下、『閃光』から書類を早くしろとのことだ。」
「もう少し、『蠍』と遊んでいてはだめか?」

あああっ・・・閣下に悩ましげな表情などさせるんじゃない『初音』!

「・・・だめだ、予定の休憩時間を36分オーバーしている。それにそろそろ・・・『閃光』がかなり速足で接近中。執務室前まであと5メートル。」
「何だと?」
「到着、只今解錠中。」
「『初音』ロックだ。ドアにロックをかけるのだ!」
「・・・只今・・・閣下、『黒猫』の解錠が上達している。少々感動する暇をもらえるか?」
「閣下、失礼します。」
「失礼しますニャン♪」
「・・・あ。」
「この、親バカめ!『閃光』が来てしまったではないか!」

凛とした女の声と何かニャンとか聞こえた。

「閣下、仮眠室ですか?」

とりあえず、現状閣下の方が若干悪いのではないかと感じるが、閣下の身をお守りするのが第一だ。

「閣下、接近中の目標をいかがいたしましょうか?」
「牽制、抵抗する場合は捕縛しろ、その間に我は書類をかたづける。『初音』手を貸してもらえるか。」
「了解。」

俺は『蠍』の方を向き、しゃがむ。

「『蠍』パートナーなら、閣下をお守りするのを手伝ってもらえるか?」
「うん。『さそり』なにすればいい?」
「『閃光』とドアの解錠をしたという『黒猫』を牽制、もしくは捕縛する。俺が捕らえるから『蠍』は目標を牽制していてくれ。」
「サー、イエッサー!」

俺と『蠍』は仮眠室と執務室を隔てるドアの横に張り付く。
カツカツとヒールのような音が近づいてくる。

「『鷹』『蠍』無理はするなよ。」
「了解しました閣下。」