08. 鷹と蠍と閃光と黒猫



ドアノブが回るとすぐさま俺は、ドアを蹴り開け、『蠍』はドアの方に義手に内蔵されているであろう銃火器を展開させている。

「『せんこー』みてみて、この前つけてもらったじゅう、うまくてんかいできるようになったよ。」
「まあ、本当ですか?よく見せてください。」

仮眠室に入ってきたのは藤色の長髪が美しい白衣を纏った女医だった。俺の気配に気がついたのか。こちらをふと見た。

「貴方が『蠍』のパートナーの『鷹』さん?」
「はい、『鷹』と申します。」
「はじめまして、私軍医を務めさせていただいております『閃光』です。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」

美人マッドサイエンティストと有名な『閃光』先生に会ってしまうとは・・・。噂では、『閃光』のナイスバディーと輝かしいくも艶やかな笑顔に誘惑され医務室にはいったら最後、元の状態では帰ってはこれない、と恐れられている眩惑の女医だ。

「ところで、閣下はどちらに、いますか?」
「ボス、おくで、しょるいと戦ってる!」
「うん、『蠍』は逃げも隠れもせず素直でいい子だニャ。」

先ほどのにゃはどうやら『閃光』の横にいる、子供だった。黒髪の一部は猫の耳のように跳ねていた。

「『黒猫』。『鷹』さんに、ご挨拶なさい。」
「はじめまして、『閃光』にょパートニャーにょ『黒猫』ですニャ。」
「さて、忠誠心の深い『鷹』さん、そちらの道、もちろん開けてくださいますよね。」
「しかし・・・」

ここを開けてしまっては、閣下の身に何が起こるか・・・

「『鷹』さん、なぜこんなことに巻き込まれているのですか?悪いのは書類をため込む閣下なのですよ?」
「・・・悪い子はお仕置きされる定めにあるっていつもパパが言ってるニャ!」

その、『黒猫』がモノマネした、もごもごしたしゃべり方のパパとやらは、まさか・・・

「ちなみにこの子のパパとは『初音』のことです。」

やはりか!先ほど閣下に親バカ云々言われていたからな。

「さらにちなみに、退いてくださらないと、変なところ子供っぽい閣下の代わりに貴方達にお仕置きを決行しますが?」

俺には閣下の代わりに命を投げ出す覚悟が・・・

「ぶっちゃけ、そのお仕置きとは、閣下でなければ悲鳴必須の侮辱と恐怖のオンパレードですよ。」
「閣下すみません!前言撤回します!」

道を『閃光』に明け渡すと奥から悲鳴が聞こえたような気がしたが。幻聴だったんだと結論付けた。