第陸話. 金魚女郎

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吾(あたし)の旦那を独り占めにして、それで漸く納得したっていうのに、この胸はまだ足りないって欲しがっている。








旦那は、春の花祭で吾を買った。
吾はその時店の親父に売られている商品で、四角い硝子の中に閉じ込められていた。親父は吾を忌々しいとばかりに腕組みをしながら見下ろしていて、それでも吾は、吾を欲しいと言ってその人が優しそうなのを見て、溜飲が下がるのを感じた。
旦那はぽんと、まるで普通にそう安くもない値段だった吾を買って、直ぐに家へと連れて行った。そして吾は無味乾燥な本ばかりが積み重なり降り積もった旦那の書斎で暮らす事になって、少し埃っぽいわと文句を言いながらも嬉しかった。
毎日、旦那は本に埋もれながら、書き物をしている。つまらない原稿用紙に向かって、熱心に筆を滑らせている。少し神経質そうな癖のある字が、性格そのものだと思った。
「…ねぇ、楽しい?」
時々、少し疲れた目で私を見る旦那の顔が好きだった。
ほんの少し微笑むようにして吾に視線を遣ると、すぐにまた原稿用紙に向かって、一心不乱に文字を書き綴る。時々分厚い広辞苑を捲ったり、吾には全く意味のわからない独逸や英国の本を探す。
捲って捲って煮詰まって、そうすると吾はどきどきする。余り体温のない心臓が拍動して、そうして旦那が吾に構ってくれる。口元までその骨ばった、ペン胼胝だけが目立つ指で、吾の口に食べ物を放り込んでくれる。それか、黙って外に出て、帰ってきた時には緑の葉も豊かな花を吾にくれる。
吾は旦那に愛されてる。
だから幸せ。
これで満足。
その筈なのに、吾はまだまだ欲しくて堪らない。
「ねぇ、吾とそれ、どっちが楽しいの?」
だって、原稿用紙や、本に向ける程、吾には視線をくれない。紙切れよりも、吾は無価値で退屈な生き物なの?
吾、そんな紙よりもずっと綺麗よ。真っ赤な着物翻して、誰より軽やかに優雅に踊れるわ。もう子供じゃないもの。
旦那と子供だって作れる。沢山、沢山、男の子も女の子も吾、育てるわ。二人の子供ならきっと可愛い。でも頭は吾じゃなくて旦那に似れば良い。末は学者かお医者様よ。女の子なら、吾の真似をして芸者になったって良い。吾何度もその子の前で舞って、しっかり教えるわ。
「旦那、文字何かじゃなくて吾を見て。ねぇ、ねぇ、無視しないでよ。お願いだから吾を見て!ねぇったら!吾此処に居るわ!答えてよ!吾と紙切れとどっちが大事なのよ!?」
吾が体全体で怒鳴って叫んでも、本の虫に取り憑かれた旦那の耳には届かない。吾は生温い涙を流しながら、体を壁に叩き付けた。そうするとやっと旦那が吾の方を見る。
びっくりした、無垢な子供みたいな顔。
「…あんまり暴れるなよ、朱水(あけみず)」
半分魂の抜けたような声でそう言った。
悔しくて悲しくて吾はもうどうしようもなくなって、何も出来なかった。文字に引き擦られて心ごと彼岸に行こうとする旦那の背中が酷く寂しくて、でもそれ以上に吾も寂しくて。いっそ本に埋もれて死んじまえ、何て悪態すら吐けない吾は何処まで馬鹿なんだろうと思った。
気の早い蝉が煩く鳴く初夏の昼下がり、二人の部屋は旦那のペンが走る鬱陶しい音だけが木霊している。







其の身悉く清め白刃の下悉く澱みの血流せ。汝が魂捉え繋ぎ、定めと成す。
丘山青を此処梅花皮の地を治めし椿欽十朗が御霊の端を担うものとして縊る。
依って、禊紅梅鍔鬼を以て証とする。








「全く…余計な事をしてくれたものだよ」
「命の恩人に結構な言い草ね、狐」
頻繁に換気をしているとはいえ、倉の中は微かに埃の臭いがしている。刀の鞘や鍔、目貫や目釘ばかりが集められた場所で着物も何もないだろうに、防虫剤の香りがするのは、この少女の形をした鬼の着物が香っているのだろうか。未だ丘山にはその判別が付かない。
如何にも現代風の、象牙色の地に浅蘇芳色の細かな葡萄柄が散った着物に、黒地に金色の木瓜柄が織り込まれた帯を巻いている。そんな可憐な少女が、数百年を経た刀の鬼であるなどとは、一体誰が見抜けるだろうか。
絢爛な拵ばかりが入った黒檀の箱に腰掛け、自身の正体である一振りの刀を抱き、老獪な少女は青を見下ろしていた。
「わたしはお前の恩人よ?あの時、お前を生かすには欽十朗の眷属にするしかなかった」
「ああ、そうだろうね。僕の人生最大の屈辱を有り難う」
「狐一匹の屈辱など、ほんの些細な問題でしかない。その命懸けて主を守れ」
有無を言わさぬ口調で以て、追い詰める。本物の鬼もかくやといった、その執念には恐怖を禁じ得ない。
更には、眷属、守護としての序列なら、鍔鬼の方が青よりも格が上だ。守護として主人に害あるものと見なしたならば、鍔鬼は何時でも青を殺せるのだ。本来それは主の命令に因って実行されるが、鍔鬼がもし何の断りもなく青を殺したとしても、欽十朗は嘆き、悲しみながらも鍔鬼を許すだろう。全て分かった上で、鍔鬼は爛々と微笑んでいる。
「然し、その欽十朗も一体何時までの命かな」
「…どういう意味かしら?」
「言葉通りさ。何だい?あの黒い手は。見えないとは言わせない。おぞましい位に黒く煤けた、あの」
「黙れ、狐」
鍔鬼が鋭く、冷たい声音で言葉を遮った。
「わたしは鍔鬼。禊紅梅、鍔鬼。鉦房から、欽一朗から始まり、欽次朗、欽三朗、欽四朗、欽五朗欽六朗欽七朗欽八朗欽九朗…」
懐かしむように目を伏せ、この場面に不似合いな、柔らかい口調で言葉を紡ぐ。
「何時でも、わたしはわたしの主を護り切った。この谷の災厄の一切合切、主と共に漱いできた。椿の血は強く土地の縁は深い。それを聞いてもわたし達に出来ぬと思うか、狐よ」
絶対の自信を見せ付けるかのような強気の姿勢に、青は僅か怯んだ。しかし、こうまで強さを誇示するという事は、裏に何かしら隠したいものがあるという事だ。大体、あの鍔鬼が欽十朗の手が呪いに蝕まれているのを見て、何もしない訳がない。或いは既に手を打ってあるのやも知れないが、それにしてもこの件には不透明な部分が多くはないか。
「なら、お前にも漱げない、あの黒い呪詛はどうなんだ」
せせら笑ってやれば、思ったのとは違う反応が返ってきた。鍔鬼は少女らしい愛らしさを湛えた顔に超然とした笑みを伴って、歌うように囁くように言った。
「…歴代の当主には勇猛な子も穏やかな子も居た。賢い者も居れば、知識に疎い者も居た。だが、誰一人として、出来損ないの男などは居なかった。皆凛々しく誇り高く、紛れもない己を持っていた。そして、欽十朗はその最たる者。椿の血が生んだ最高傑作。心根穏やかにして自身を偽らず、侠気を佳く識り、妖魅の声に耳を傾ける…わたしの力など及ばずとも、あの子は自らの力で進むだろう」
思わず毒気を抜かれて、別な意味での苦々しさが込み上げる。胃が焼けたようにむかむかとし、えも言えぬ不快感が満ち満ちて、青は唾を吐き捨てようとするのを自制した。
「随分な親馬鹿だな」
「当たり前だ。お前とは器からして出来が違う」
勝ち誇ったような態度に、青は小さく舌を打った。矢張り食えない。
「それで?だから今も、妙な奴に好かれてるっていうのに、放っているのかい?」
「ええ、わたしが出る迄もないわ。そんなに主人が心配?見上げた忠誠心ね」
鼻で笑ってやれば、冷めた表情を崩さぬままに、狐が激昂しているのが気配で分かった。着物を帯でなく大陸風の腰紐で縛った青年の姿を見遣る。
この狐は自尊心が強い。虎の意を借る何とやら、など知らぬとばかりの風情だが、伝説に残る大妖狐の直系と聞かされて育ったならば無理からぬ話かも知れない。おまけに、話し振りからして、青はまだ五百年も生きておらず、正式には妖狐ですらない。定義上はただの野狐である筈のものが、こうまで見事な人型を成しているとなると、血筋の話もあながち嘘ではないのかも知れない。着物の柄から帯の織りは元より、和装洋装支那服、長髪短髪と変幻自在な狐狸の類は稀有な存在だ。
御するには骨が折れるだろうが、眷属とするなら丁度良い。術者でない欽十朗には、呪いの知識に通じた従者が必要だ。狡賢い、知恵の回る、味方が。
どんなに御し難いものが相手だろうと、欽十朗ならば問題はない。欽十朗は決して他人に膝を折らせようとは思わない。だからこそ、この狐を御す事が出来る。
鍔鬼は心中でほくそ笑んだ。
「でも…そうね。欽十朗があんな女に入れ込むとは思えないが、少し様子は窺っておいても悪くない。狐、行って見てきなさい」
「何故僕が…」
「最初に主人を狙うものについて言及したのはお前よ。眷属の務めを果たしなさい」
いけしゃあしゃあと言ってのける、忌々しい刀の鬼は、女特有の打算的な語調で以て青を翻弄した。たかが狐と見下しているのを隠そうともせず、また実際に強者であるという事実が、青を歯噛みさせた。
欽十朗にちょっかいを出そうとしている妖が女だと知っていたのかと問い詰めても、きっと、梅花皮にわたしの知らぬ事はない、と答えるに違いない。それは青に対する紛れもない嘲笑だと、この鬼は分かっているのだ。分かった上で、命じるのだ。
「厭とは言わせないわ。お前の魂は既に、主の魂の端を担っているのだから」






簾の隣にぶら下げられた、南部鉄器の風鈴がよく鳴った。風の気持ち良い、夏にしては暑さがそう鬱陶しくもない日だった。
「ごめん下さい」
一人の、若い大柄な男が旦那を訪ねてきた。
丁度その頃旦那は夏風邪の引き始めで、熱で赤い顔もそのままに、布団からよろよろと起き上がった。
「無理しないで」
吾はそう言ったけど、旦那は聞いちゃいなくて、さっさと玄関まで出て行ってしまった。咳を交えつつ応対する。
「すみません、夜野田隆信(よのだりゅうしん)さんは御在宅でしょうか?」
「ああ、僕が隆信です」
「突然の訪問、失礼かとは思いますが、伺わせて頂きました。あなたの書いた“河伯の名残”を拝見したのですが――…」
そのまま少し話し込んで、来客の背中を見送った時には、旦那はいたく上機嫌だった。
どうやら、途中で書くのを止めてしまった話の続きが是非読みたいとの話らしい。熱心な読者の登場が余程嬉しかったのか、鼻歌混じりに机の奥から粗末な装丁の本と、新しい原稿用紙の束を取り出して、また書きものを始めた。題名は河伯の名残、下だった。
それから、旦那は以前にも増して文字に傾倒し出した。食事の時以外、吾には目も呉れない。一心不乱にそれこそ魂も命も削るように書き続けた。
「やぁ、やっと一話分、出来たよ」
「恐縮です」
一週間して、また例の男が訪ねてきた。簡潔に礼を述べた男に対し、旦那は満足気に微笑んだ。吾が一度も見た事がないような笑みだった。
風邪はまだ治っていなかった。熱は引いたようだったけれど、未だに咳が続いていた。日に何度も背中を丸め、激しく咳き込む。旦那の肺が悲鳴を上げる。旦那は省みずに机に向かう。段々と、旦那は食事すら忘れるようになった。
「先日は、どうもありがとうございます。とても面白かったです」
「ありがとう。前編が三話後編だったから、後編も三話構成にする予定でね、あと一話で完結だ。はい、これが五話。次は…そうだな、三日したら来てくれないか。その頃には書き上がっている筈だ」
「わかりました。三日後にまた、伺います」
す、と紐で封をされた茶封筒を、旦那は受け取らずに、慌てて手で制した。
「ああ、原稿は君が持っていてくれないか?」
「良いんですか?」
「僕が持っていても、どうにもならないからね。今更自費出版するつもりも無いし…どうだろうか?」
「いえ、頂けるなら、有り難く頂戴しますが…すみません。いきなり押し掛けた奴に、わざわざこんな…」
表情が乏しいながらも恐縮し切った様子で頭を下げる青年が、頭を上げた際に、ちらと部屋の隅に居る吾を見た。目が合った。少しぎょっとしたような顔をするのを見ると、今まで吾に気付かなかったのかも知れない。それでも、直ぐに気を取り直して、旦那の方に視線を戻した。
「それこそこっちの台詞だよ。まさか、こんな所まで訪ねてきてくれる熱心な読者が居る何て、全然、夢にも思わなかった。ありがとう」
来客が返って行ってからも、旦那は不眠不休で書き続けた。咳はそんなに激しいものではなくなっていたけれど、顔はもう土色で、唇の血色も悪かった。普段より細められた瞳は眠たそうというよりは疲労の色が濃い。長く骨ばった均整な手は、まるで指が枯れ枝のようになって、最早吾が泣こうが喚こうが、この声が届かないのを知った。
朱水、と宝物のように名を呼ばれたのは何時だったのか、もう、思い出せない。








不世出の文学者、夜野田隆信氏を訪ねた時、彼は実に幸せそうな、穏やかな表情で以て出迎えてくれた。
最後の一話分はどうにも短く収まらなかったのか、先だっての二話と比べて、原稿は分厚かった。確かに、上巻を書いてから時間が経って久しいだろうに話の継ぎ目や内容はしっかりと一本の芯を持っていたし、完結に量を割くのは無理からぬ話だろう。
氏は突然の訪問にも拘わらず、件の小説“河伯の名残”の続編を書く事を快諾してくれた他、実に暖かい感謝の念すら示し、原稿すら譲ると申し出てくれた。そして、下巻と成る四、五、六話を三回に分けて受け取りに来た次第だったのだが、目に見えて氏の体は衰弱していた。
最初は只の夏風邪であろうと断ずる事が出来る程度であったが、二度目の訪問で、在る筈のないものを目にしてしまった。透けるように、それでいて鮮やかな赤を発する着物を身に纏った、美しい女の姿だ。
どうやら氏が紹介しない所を見ると、全く気付いてはいないようだった。然し、女の方はといえば、じっと人形のように座って、唇を固く閉ざして氏を注視している。
これは、どうにも出来ない。
瞬時にそう思った。
力こそ大した事のない妖のようだったが、氏以外に何かする風でもなければ、動こうという気もなさそうだった。あるのは強い執着というか、執念だけで、これでは俺の入る余地はない。
何故なら俺は只の無力な人間でしかない上に、俺の家とこの町を護る鍔鬼であっても、椿家に仇成すものしか祓えないからだ。そうでなければ鍔鬼の居る倉まであの女を誘き出すしかないが、それすらも出来ない。
どうするべきかと悩みつつ、夕暮れの道を歩いていると、えも言えぬ香の薫りがふわりと漂ってきた。これは、蓮だろうか。水を連想させる類であるのは間違いがない。
「ねぇ…」
腰に近い背中の部分、服のそこを掴んだ。さして力は強くない。否寧ろ殆ど力など込めてはいないだろう。そこが厄介だ。そう思う。
「ねぇ、あんた…吾の旦那になっちゃくれない?あの人はもう沢山なの。本と紙ばかりに構って、吾の事など見向きもしない。薄情な男よ、あの人は…」
「愛していたんじゃないのか」
「ええ、愛していたわ。だから余計に憎いんじゃない。愛しくて憎くて…もう堪らないから吾、彼処を出てきたのよ。ねぇ、あんた、吾を連れて行ってよ…」
「俺はお前を愛していない」
「それでも良いのよ。何処かに連れて行って。あんたの部屋の窓辺にも、机にも、何処へなりと」
歩いても歩いても、女はしつこく付いて来る。欽十朗は振り返らなかった。引っ張られ服の裾にある種ひやりとしたおぞましさを感じながら、これは長丁場になりそうだと見当を付けていた。歩きながら、何か良い手を考えねばならない。
「ねぇったら、いいでしょ?一緒に居ても。吾、あんたが好きなのよ」
しかし、しつこい女、まして妖の妓など、どう振り切るべきなのか、欽十朗にはさっぱり見当が付かない。ほとほと困り果てていると、足元も暗くなってきた時分、ふと柔らかく滑らかな、それでいて何処か覚えのある感触がするり、足を撫ぜた。
「それは無理な相談だな。欽十朗には妾が居るのだから、ね」
すいと現れたのは、氷の紗に藍染めの縁取りの貴妃服を身に纏い、目尻の紅も蠱惑的な、正しく気品漂う、天女もかくやという程の、絶世の美女だった。貞淑を絵に描いたような、しかしそれでいて婀娜な仕草で、白魚の指を欽十朗の肩に掛け、絶妙に美しいが何処か高慢な笑みを美貌に貼り付け、赤い衣のお女郎を見据えていた。
これには欽十朗も驚いて歩を止めた。そしてその一瞬で、綺麗に片は付いていた。
「お前のような醜女、一口で終わりさ」
ぐぱぁ、と一気に美女の姿が捻曲がり、巨大な化け狐の姿へと変じた。大きく開いた口で赤い衣の女郎を一呑みにし、軽く二、三度咀嚼しながら伸ばした首を元に戻した。
首を体に引き寄せると、今度はその首が若く精悍な男の顔となる。体も体で、何時の間にやら何食わぬ様子で、痩せた男のものへと変じている。着るものにしてもそうだ。繊細な貴妃服は消えて失せ、粋な縦縞の着物を難無く着こなしている。
「丘山」
虚を突かれたまま、反射的に欽十朗は答えを口にした。
「遅いと思ったら、あんな小物に手間取っていたのか」
「本当か?随分しつこかったが…」
「小物さ。腹の足しにもなりやしないよ」
「そうか…しかし、何にせよ助かった」
食い足りぬとばかりに舌なめずりする丘山を見て、苦笑した。随分雑な解決法だが、結局どうにかなったのだから、ここは感謝して然るべきだろう。あの悪趣味な演出は何とも形容し難いが、狐の性とでも思っておこうか。
こうして、さっさと歩き出した丘山の影を踏みながら、欽十朗は漸く帰路に着いたのだった。




翌日欽十朗が訪ねると夜野田隆信は飼っていた金魚が死んでしまったと嘆いて、古い硝子の金魚鉢を見せた。
中には一匹、驚く程大きな赤い流金が浮いていた。