03. 髪




空が回る。

ゆっくりと雲が流れる。僅かな隙間から、空が顔を覗かせる。
まるで空が流れているような、そんな、錯覚。

「ねぇ。」

声がして、空に向けていた目を下へと向ける。真っ白な髪が揺れる。

「何を見てるの?」

辺りに人影はない。通りすぎるものもいない。
これは何も持たない、通せないもの。
通してはいけない。話は、してもいい。

「空。」

それだけ言えば、まるでクスクスと笑うように髪を揺らして、それは戻っていった。
残ったのは、空と、門。